銀も金も玉も何せむに
銀(しろがね)も 金(こがね)も玉も 何せむに
まされる宝 子にしかめやも (山上憶良)
娘の仕事の都合で、祝日の一日、
二人で過ごした。
一緒に朝食を食べ、
近くのお寺の境内で
ハトとたわむれた。
食べもしないくせに、
ベビーカステラを買うといい、
袋をにぎって離さなかった。
ベビーカーの上から
斜め後ろの私を見上げて
なにやらしゃべって、にっこりした。
コンビニおにぎりが大好きで、
スーパーでも見つけて買うと言った。
かごに入れずに自分で持つといって
きかなかった。
右手におにぎり、左手にベビーカステラ。
小さな手の指が白くなるほど
力が入っていた。
二人で昼食を食べ、
二人で一駅だけ電車に乗って、
大型商業施設の
無料イベントを見に行った。
満員で立ち見。
30分も背伸びしながらだっこしていた。
ショーの終わりに、
キャラクターに手をふっていた。
アイスを食べに行ったのに、
ちっとも食べなくて、
包装紙を小さくたたんで持って帰ると言った。
背が届かないのに、
駅の改札機にカードを入れるんだと
だだこねた。
カードを持たせてやると満足した。
ベビーカーごと抱きかかえて階段を登ると
私は息が切れた。
二人で昼寝した。
小さな手に小さな本をにぎったまま寝た。
眠りに落ちる前、
「○○の(私の)パパ」と言った。
最近、娘と私とで、
「パパは△△の(娘の)パパやで。○○のパパとちがうんやで。」
と話すようになっていた。
仕事を終えた娘とその姉に起こされて
ご機嫌ななめだった。
夕食のオムライスを作っている私の所へ
「だっこ~」とやってきた。
オムライスは食べなかった。
でも、みんながかわりに食べようとすると、
「あかん!」とおこった。
食べないくせに自分の椅子からおりて
私の膝の上にすわった。
ケーナ教室に行こうと上着を着た私に
必死になって
「いや!だっこ~」「パパ~!」
と大泣きした。
泣きやむことができなくて、
ひきつけるのではないかと思うほどだった。
だっこしながら、胸が痛んだ。
玄関を出てもまだ
泣き叫ぶ声が聞こえていた。
地下鉄のホームで、
今日撮った携帯のフォトやムービーを見た。
娘に送ったメールの返事が、
帰り道で届いた。
「持って帰ったオムライスを
一人でかしこく全部食べた」とあった。
これから先の数え切れないできごとに埋もれて
この日のことは
霧の彼方へ行ってしまうだろう。
きっと、この子が
私をパパと呼ばなくなるよりはやく。
せめて私が
ずっとずっと忘れないでいてやろう。
まだ歩き出したこの子のかわりに。
私には
愛おしいこの子を
守り続けることがかなわない。
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コメント
この子は、自分に父親がいないということをいつ理解するのでしょう。そのとき、親を憎む子にはなってほしくありません。
いつか、老いた私を疎ましがり、近寄らなくなる日がやってくることでしょう。
しかし、たとえ記憶から消えてしまうとしても、今このときを暖かさで満たしてやりたいと思っています。
投稿: MIYA | 2008/01/16 19:58
後追いで泣かれ
胸が痛むほどいとおしいお孫さん
宝物ですね
遠~い昔子供に後追いされて
胸が痛いほど切なかった思い出があります
人を愛しむ心忘れたくは無いですね
投稿: MINT | 2008/01/16 13:00