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2009年3月

2009/03/22

鼻歌

ペダルをこぐHANAが
頭を左右にふりながら何かを口ずさんでいる
指が白くなるほどにぎりしめていたハンドルを
今ではときどきはなしてみたりする
私を追いかけてスピードをあげたりもする
ふと後ろをだれもおしていないことに気付いて
止まってしまうけれど

息子の部屋に入り込んでいるHANAに
「お買い物行くよ~」と声をかけると
急いでおりてくる
私が後ろからおして
HANAがこいでいく

いつのまにかこんなに大きくなった
そのぶん私の時間は減っていく
確実に砂時計のように


この連休のはじめに
MIYOから
新しい命を宿したと聞かされた

産休や育休があるわけではない
今度は一人の身ではなく
HANAがいる
転勤が決まった私にとっても
物理的に限界がある

しかし
命を絶ってしまうという結論は
MIYOの口からは出ない
私もまた

それでしあわせになるのかと
相手の親は言う
しかし
一つの命を絶つことが
しあわせにつながるといえるのだろうか

MIYOは一人で産み育てるつもりだ
苦しくてもそれがしあわせなのだと
MIYOは黙って私に告げる

MIYOがHANAを宿したとき
私は賛成しなかった
生活のめどは何も立っていなかった
何よりその男が
MIYOと子どもを愛してくれるとは思えなかった
だから反対した

でも、MIYOはHANAを産み
一人で私の許を離れて
HANAと一緒に暮らしてきた

MIYOが年子の3人目として
私たちの許に生を得たとき
私は悩んだ
知人のすすめで
あきらめることを考えたりもした

ともかくもMIYOはMIYOとして
この世に出で
ともかくもHANAはいまこうして
私の前で歌を口ずさみながらペダルをこいでいる


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2009/03/16

ねぼう

帰ってみたら
テーブルの上に
いちごやらコロッケやら
プリキュアのパンやら
オーブントースターにはチキンナゲット
のみかけのジュース・・・

昨日、MIYOがAムロちゃんのコンサートに行っている間、
HANAとスーパーで買い物した
いちご。プリキュアのパン。
朝、食べると楽しみにして、ゆうべはお泊り。

だけど、
みんな食べられずに行った。
きっと
ねぼうしたのだろう。
起こしてやればよかった。

HANAは泣いたのかな
MIYOは今日、仕事が休み。
ねぼうついでに保育所も休ませたらよかったのに

あわてて出かける姿が浮かんで
ちょっとせつなくなった。

HANAの大好きないちごは
しなびてしまっていた。


遠い日、
眠ったままの子どもたちを車に乗せて
保育所に送ってくれる義母の家まで送り、
夕方迎えに行った車の中で寝てしまって、
次の日の朝まで起きなかったことがある。
目が覚めたら家ではなくておばあちゃんちだった。
あのころのことをMIYOはどんなふうに覚えているのだろう。


さっき、
次の休みに、映画に行く約束をした。

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2009/03/14

心折れる

理不尽な扱いにも
心折れなかった

共感してくれる人がいたから

心残りで胸がはちきれそうになっても
あふれることはなかった

思いを同じくする人がいたから


感謝の言葉でしめくくろうとしたら
思いもかけない言葉が返ってきた

退職を決めた
3月31日をもって
職場を去るという


今朝、目覚めたとき
現実だと知った

心が折れる気がした


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2009/03/11

夕暮れ

ふとした瞬間にも
思い起こされ
ネット上を縦横に走りぬけるように
思考が錯綜する

思いをぶつける
釈明する
理不尽さを主張する

瞬時に現実へと戻される

こんな時間が
雪のように積み重なり
根雪となって
心の澱となり
安らかな眠りと
笑うという行為を失った


小川のほとりのねこやなぎ
つくし
たんぽぽ
土手すべり

おみやの石垣を過ぎて
山へ向かう道すがら
トミーが後ろを振り返る

お寺の山門で撮った
3人の子どもたちとトミーの写真

「あまがえる」といって土手を飛んだ
息子のビデオ


目覚めればその日であるような
昼とも夜ともしれぬ瞬間
かろうじて
今が夕暮れであると知る

しかしこの夕暮れは
万引きをした子どもたちを叱り付けたあの
家の鍵を落として帰ってきた娘を叱ったあの
息子が靴箱の扉をけやぶったあの
父の急逝を告げられたあの
あのときを超えてきた
まぎれもない今日の
夕日の見えない屋根の隙間をおとずれた
今日の
夕暮れなのだ

夕暮れは
スーパーの袋と共に夜となる

点いたままの枕もとの灯りと
あいかわらず
冒頭部分しか覚えていないDVD


そして朝という区切り


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