鼻歌
ペダルをこぐHANAが
頭を左右にふりながら何かを口ずさんでいる
指が白くなるほどにぎりしめていたハンドルを
今ではときどきはなしてみたりする
私を追いかけてスピードをあげたりもする
ふと後ろをだれもおしていないことに気付いて
止まってしまうけれど
息子の部屋に入り込んでいるHANAに
「お買い物行くよ~」と声をかけると
急いでおりてくる
私が後ろからおして
HANAがこいでいく
いつのまにかこんなに大きくなった
そのぶん私の時間は減っていく
確実に砂時計のように
この連休のはじめに
MIYOから
新しい命を宿したと聞かされた
産休や育休があるわけではない
今度は一人の身ではなく
HANAがいる
転勤が決まった私にとっても
物理的に限界がある
しかし
命を絶ってしまうという結論は
MIYOの口からは出ない
私もまた
それでしあわせになるのかと
相手の親は言う
しかし
一つの命を絶つことが
しあわせにつながるといえるのだろうか
MIYOは一人で産み育てるつもりだ
苦しくてもそれがしあわせなのだと
MIYOは黙って私に告げる
MIYOがHANAを宿したとき
私は賛成しなかった
生活のめどは何も立っていなかった
何よりその男が
MIYOと子どもを愛してくれるとは思えなかった
だから反対した
でも、MIYOはHANAを産み
一人で私の許を離れて
HANAと一緒に暮らしてきた
MIYOが年子の3人目として
私たちの許に生を得たとき
私は悩んだ
知人のすすめで
あきらめることを考えたりもした
ともかくもMIYOはMIYOとして
この世に出で
ともかくもHANAはいまこうして
私の前で歌を口ずさみながらペダルをこいでいる
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