帰郷
今こうしていることが
現実であるようなないような
不思議な感覚の中で
車を走らせてきた
父の急逝を知らせる電話を受けたときも
妙に冷静な自分がいた
明け方帰郷し
昼には父と対面し
家に迎えた
次の日には葬儀をし
その夜父は骨となっていた
淡々と流れた?
映画「おくりびと」を観たとき
会場は中高年でいっぱいで
すすり泣く声も聞こえた
でも私は泣かなかった
泣けなかった
出てきたのは花粉症の涙
そうだ父の死にも泣かなかった
泣けなかった
あれから一年半が過ぎ
いくつも夜を重ねて
朝を迎えて
でも
何も変わっていない
先日母の通院に付き添い
あいかわらず一時間以上待たされている間
どれだけ
「その話はやめよう」
と言っただろう
母の口から父の話が出る
父の死を惜しむものでもない
自らを責めるのでもない
そして
一番不幸なのは自分だという
病院から帰りの車の中で
母は
自分が死んでしまったらいいのだろう
と興奮し
シートベルトをはずして
走る車から降りるといった
そんなことを思い出しながら
なつかしくもない
ほっとするという感覚もない
私が育った家に向かう
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