根無し草
いつもの買い物に出る
二時間のフリータイムに
郷里でペンションのオーナーシェフをしている
同窓生に会いに行った
同窓生というだけで親交があったわけではない
フレンチの修行をし
他府県も渡り歩き
そして郷里に
郷里の食材を使ったフレンチという
今の形に落ち着いてもう18年になるらしい
ベランダから眺める里山の風景を残したいと
農業を志し、あるいは継承しようという有志をつのり
活動もしている
麓に一枚の田んぼを借りて
農業も始めていた
土地の人たちに認知されるには
10年も20年もかかる
そう彼は言った
さまざまな苦労があったことだろう
彼に聞く同窓生たちの情報は
なつかしくもあり
驚きもあり
介護休暇に入ってすぐ
市長をしている同窓生に会いに行った
そのときにも聞いた
郷里で活躍する同窓生たちの話もふくめて
私には「懐かしい」を超えた複雑な思いがある
シェフと会って一週間後
母の快気祝いを準備していたら
ギフトセンターの営業員が訪問してきた
私の名前を口にするその女性をよく見れば
高校のときのクラブの同窓生だった
お下げの印象しかない彼女とは
同じクラブではあっても
親しく話した記憶がない
同じクラスだったこともなかった
Uターンして22年になるという
思い出話や同窓生の情報に
しばし心が和んだ
二日後、シェフの話にも彼女の話にも出てきた
同窓生を訪ねた
山の中の大きな寺院の次男
坊主頭に作務衣の彼が
私を思い出すのに数秒
私も初めは彼が本人とはわからなかった
35年の歳月がお互いを変えていた
4月に母親を亡くしたばかりであった
兄が住職で次男の彼は未婚のまま
懐かしがり、また会いたいと言ってくれた
山深い参道を下りながら
私はやはり複雑な思いだった
国道に出たとたん
時間がいつものように流れだした
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